こちらの目次から探す
熟成肉=ドライエージングとはなに?どうやって作るの?
最近なにかと人気の熟成肉ですが、こちらがどういったお肉なのかをご存知でしょうか?
また、熟成肉の作り方やその種類などもあるわけですが、これらをちゃんと理解している方というのは少ないかと思います。
そこで、ここでは熟成肉=ドライエージングというものをご紹介しながら、その作り方などをご説明していきます。
家庭でも作ることができるのかどうかについても触れていきますので、ぜひ参考にしてみてください。
熟成肉=ドライエージングとは?
熟成肉というのは簡単に言ってしまえば「発酵したお肉」です。
精肉として出荷されてから2週間から長いもので半年くらいの熟成を重ねたものまで幅広く存在しますが、実は明確な定義というのはありません。
そのため、お店などで提供されている熟成肉というのはかなり味に差があるということになります。
しかし、実際に熟成肉というものがなんなのか分からないと比べようもありませんので、まずは作り方と重要なポイントを見ていきましょう。
熟成肉の作り方は2つ
まず知っておいてもらいたいのが、熟成肉を作る方法は2つあるということです。
ひとつはドライエージングで、もうひとつがウェットエージングとなります。
端的に言えば乾燥させて熟成させるか、それとも水分を多めに保ったまま熟成させるかの違いですが、多くの熟成肉専門店ではドライエージング製法をおこなっていますので、ここではドライエージングに的を絞ってご紹介していきます。
大切なポイントは温度と湿度、そして風
さて、お肉を乾燥させて熟成させるドライエージング製法ですが、大切なポイントとしては3つ挙げられます。
ひとつ目が温度で、これは各社いろいろ研究を重ねていますが1℃~3℃くらいが好ましいようです。
これは1℃を下回ると水分が凍ってしまい、たんぱく質を分解できなくなってしまうからであり、3℃よりも温度が高まると熟成ではなく腐敗していってしまうからという理由から。
乾燥状態で熟成させるお肉というのは、表面に麹菌といったたんぱく質を分解してアミノ酸へと変化させる「良い菌」を付着させて、その菌を利用して旨味成分を凝縮させていきます。
しかし、温度が1℃~3℃の枠を外れてしまうと、別の雑菌の繁殖能力が上回ってしまい、結果としてただ腐敗していってしまいます。
その腐敗を防ぐために温度管理は必要不可欠で、常に熟成庫は一定を保っているとのことです。
ふたつ目のポイントですが、こちらは湿度となっていて目安は70%前後とされています。
微生物の動きがなくならないように、あえて湿度を保つことによって牛肉のたんぱく質をアミノ酸へと分解させるために必要な湿度がこちらの数字となっているわけです。
そして最後に重要なポイントが「風」ということですが、これは肉の表面にどうしても付着してしまう「悪い菌」を吹き飛ばすためでもあり、熟成の邪魔をさせないため常に熟成庫の中は気流ができるように工夫されています。
また、表面を乾燥させることでお肉の内側にある水分をなるべく活性化させて熟成を促す効果もあるということです。
ドライエージングと腐敗はイコールではない
熟成肉というと「腐りかけているもの」という認識の方がたまにいますが、腐敗とはまったくの別物であることを覚えておいてください。
腐敗というのはお肉の中すべてにカビが生えてしまって食べられない状態のことを指します。
熟成というのはこの腐敗とは違い、表面は乾燥や菌によってカチカチになりますが、中はしっかりと精肉になったときと同じような状態を維持している状態です。
もちろんたんぱく質が分解されて赤身部分も脂身部分も本来の柔らかさはありませんが、その分旨味が凝縮されて素晴らしい味わいとなっているのが熟成肉の特徴であり、魅力となっています。
熟成肉は家庭で作ることが可能かどうか
さて、熟成肉をドライエージングの製法で作れるかどうか?という点ですが、結論から言いますと「非常に難しい」かと思います。
まず、家庭で温度を1℃~3℃という数字に一定期間(短くて2週間ほど)キープしておくとなると専用の大きな冷蔵庫が必要となってきます。
そして開け閉めをなるべくしないというのもポイントであり、さらには湿度を70%前後に維持するというのも困難です。
最大の問題点としては冷蔵庫の中で常に風を対流させなければいけないわけですが、そういった装置は一般的には販売されていません。
小型で電池式の扇風機を冷蔵庫の中に入れておけばいいのかもしれませんが、電池が切れるタイミングも分かりませんし、常にチェックをしようとなると冷蔵庫の開閉に繋がり温度が変わってしまいます。
こうした条件面だけを見ても非常に難しく、また熟成肉を作るには数十キロ単位のブロック肉でないと食べられる分を確保できませんのでコストという面でも労力に見合わないかと思います。
やはり熟成肉を食べるのであれば、専門的に取り扱っているお店に行くのが一番と言えそうです。
熟成肉=ドライエージングは製法が大事ですね
熟成肉の作り方から、ドライエージングという製法がどういった点を重視しているのかについてご紹介してきました。
実際に家庭でも作れるのかという点については、「あまり現実的ではない」という結論に至りましたが、その理由についても理解してもらえたかと思います。
お肉の旨味が凝縮された熟成肉ですが、いまのところはやはり飲食店で楽しむことが無難だと言えますね。